自社で7年間ずっと転用し続けている型枠があると聞いて、開発元である「株式会社フォービル」の会長である森本さんにお話を伺いました。
噂の高耐久型枠は「ガッチ」というFRP(※)素材の製品。NETISにも登録されており、新技術であることは国土交通省お墨付きです。 そんな「ガッチ」を7年間転用し続けることで、どれほどのコスト削減が可能なのでしょうか。
「ガッチ」がどんな製品なのか、7年使用した型枠の状態、金銭的・時間的コストはどれほど削減できるのかなど、高耐久型枠の実情に迫りました。
「ガッチ」は自社で開発した3次元システム型枠と言える製品です。 子どものおもちゃでよくある「ブロック玩具」をイメージしてもらえればわかりやすいと思います。
入隅や出隅の役物は当然として、3面入隅や2面出隅1面入隅などの特殊な役物を組み合わせることで、3次元で型枠面を構成していきます。
クリップをクリップ穴に通すことで連結させるので、熟練者でなくても表面がデコボコにならず、キレイにそろえることができますし、組み立てがかんたんなので工数削減にもつながっています。
精密な金型で成形しているので、コンクリート表面の仕上がりも良好ですよ。
FRPという船の船体にも使われている素材を使っているのが主な理由ですね。
FRPは紫外線や衝撃に強く、対候性に優れており、屋外にさらされることの多い型枠でも劣化しづらいのです。
今後もこの型枠を使い続ける予定で、200回の転用を目指しています。
写真が現在の「ガッチです。最初の製造(2015年)から7年を経過していますが、使用にはまったく影響はありません。ただ、使ったら使いっぱなしではなく、メンテナンスは必要です。
現場使用後に、倉庫に返却された「ガッチ」の高圧水洗浄を行っています。さらに、現場へ出荷する前には、車用の固形ワックスを塗布しています。
保管する際には、屋根のある場所で紫外線にさらさないようにすることで、劣化を防ぎ、より長く使うことができますよ。
FRP製の高架水槽の耐用年数は15~20年とされています。「ガッチ」も保管と手入れをしっかりと行っていけば、15~20年の使用も可能なのかもしれませんね。
たしかに比較対象がないと、コスト削減できたかどうかわかりませんね。
「ガッチ」の基本パネルは600x1800x72mmで、価格は13,800円(税込15,180円)/枚です。対して、600x1800の木製パネルが平均的に2,800円くらいではないでしょうか。
また、木製パネルの場合は、最大でも転用回数は11回ほどですね。
型枠の1年間での使用回数を10回と仮定すると、7年間の転用回数は10回x7年で70回。これを木製パネルの転用可能回数11で割ると6.3回の買い替えが必要となりますので、2,800円x6.3回=17,640円が必要です。
つまり7年間で、17,640円-13,800円=3,840円のプラス。実際にはこれに木製パネルの処分費用が加わりますし、作業の効率アップなども考えると、「ガッチ」を7年間使用すると、1枚分あたり4,000円程度のコスト削減が期待できます。
これは1枚分の比較なので、例えば600x1800mmのパネル1,000枚分だと、7年目には400万円程度のコスト削減。 10年目には、10年x10回(年間使用回数)=100回 、100÷11(木製パネル使用可能回数)=9.1回、9.1x2800円(木製パネル価格)-13,800(ガッチ価格)=11,680円 となり、1,168万円のコスト削減につながります。
「ガッチ」は組み合わせで使用できるシステム型枠です。30mmのモジュールに合えば、べニア板をカットしたり、桟木を打ち付ける加工も必要ありません。
「ガッチ」を使用する際は、倉庫で事前に組み合わせを行います。倉庫での組み合わせはクリップではなくボルト・ナットで行い、しっかりと固定をします。取り扱いがしやすい大きさで準備しておくと、現場では加工物をクリップで止めるだけです。
ただ現状では、30mmモジュールが採用されるケースはほとんどありません。その場合は、入隅・出隅は従来型枠で組み立て、壁面など大きな面に対して、パネルを使用します。「ガッチ」が普及していくにつれ30mmモジュールも採用されて、作業がより簡易化されていくと思いますが、元請様や設計事務所様のご理解をいただくには、さらなる努力が必要と思われます。
「ガッチ」と従来型枠で、まったく同じ構造物の組み立て時間を計測しました。墨だし・加工・組立・解体までの時間ですが、従来工法の38時間に対して、34.5時間と10%の短縮となりました。
この比較を行ったのは2015年頃で職人さんも「ガッチ」に慣れていなくて大きな差にはなりませんでした。特に、加工時の3次元役物の使い方に戸惑いがあったと思います。
組立だけで比較すると、比較動画の早送り時間で計測できます。従来工法16:39秒「ガッチ」12:43秒と、24%の短縮となっています。組上がり精度については、システム型枠の方が良好であったことは言うまでもありませんね。
高耐久のシステム型枠を7年間保有することで、1枚当たり4,000円のコスト削減につながることが分かりました。4,000円というと小さく聞こえますが、保有枚数や転用回数が多ければ多いほど、保有年数が長ければ長いほど、100万円、1000万円単位でのコスト削減につなげられそうです。
また、熟練度を選ばないことや時間的コストの削減もできるのであれば、長い目で見て、型枠施工事業の経営にはプラスに働きそうですね。